アツマールの思い出と学び

ゆとり仕様と親切仕様をはき違えるんじゃねぇ・・・ゲーム作りたいんだったらな。

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・本記事では頻繁に「ゆとり」という言葉を使いますが、害意はありません。
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こんにちは。

 ソケットれんち君がポケモンソード/シールドをやっていたんですけど
昔のポケモンから親切になったところをゆとりだのなんだのピーピー騒ぐんですよ。
いやいやこれはね、ゆとりなんじゃなくて親切になったんだよ、って教えてやるんですけど
どうもいわゆる「ゆとり仕様」と「親切仕様」の区別がつかないみたいで。
なんだこの記事は・・・

ゲームを作ろうとしているなら、「ゆとり仕様」と「親切仕様」は区別がつけられた方が良いでしょう。
なぜなら「親切化」はプレイヤーの間口を広げることにつながりますが、「ゆとり化」は必ずしもそうではないからです。
私は、「親切化」はどんどんしていって、「ゆとり化」は慎重にやるべきだと考えています。
(ただし、親切化にもデメリットはあります。)
というわけで、本記事はソケットれんち君向けに「ゆとり仕様」と「親切仕様」の境界線の引き方を教えるべく書くものでありますが
それ以外の方にも、脳内議論しながら楽しく読んでもらえたらなと思います。
ただ、この境界線の引き方は人によって違うものであると思うし、明確な線ではなくグレーゾーンも存在します。
ここに書くことはあくまでも私個人の考えであるということをご理解ください。

〇そもそも「ゆとり仕様」ってなんなの!!!

先に言っちゃうと明確な定義なんてないと思いますが・・・一つ例を挙げてみましょう。
「ゆとり仕様」と聞いて真っ先に挙がる具体例ってありますか?
私はwiiのマリオの「このステージをクリアしたことにして次に進みますか? はい/いいえ」が浮かびます。

イメージ図

(字面からはヤバい臭いがプンプンしますが、実際には何回やってもクリアできない時だけ発生し、
クリアしたことにしてもクリア表示が欠けた状態(?)になるようです。
ググっても詳しい情報がなく、条件はわかりませんでした。)
これはゆとり仕様なのか?
私はこのマリオをやったことがないので本当のところはわかりませんが、
「はい」を選ぶことでこの先ゲーム上でどのような影響があるかで「ゆとり仕様」か「親切仕様」か解釈が変わってくると思います。

仕様A.「クリアしたことにした」ステージがあっても、ラスボスに挑むことができる。(エンディングを見ることができる。)
仕様B.「クリアしたことにした」ステージがあると、ラスボスに挑むことがでない。(エンディングを見ることができない。)

AとB、どっちが「ゆとり仕様」で、どっちが「親切仕様」でしょう、と聞かれたら
Aが「ゆとり仕様」で、Bが「親切仕様」だということはすぐに答えられると思います。
ではなぜBは「ゆとり」でなく「親切」なのか?
その仕分けには「ラスボス前のゲームの状態」と「プレイヤーの体験」がどうなっているかを考えることが重要です。

仕様Aについて
”マリオで見事にラスボスを倒した赤木君と伊藤君。
しかし伊藤君は「クリアしてないステージがある」とゲームに記憶されており、ステージクリアの体験が一つ欠けている。”

ゲームを親切にしたつもりが、クリアした人同士の間でこのような差異を生み出してしまう仕様、それが「ゆとり仕様」だと思います。

一方、仕様Bについて
”マリオでラスボスを倒した赤木君と伊藤君。
伊藤君はステージ3をクリアできなくて、一旦「クリアしたことにした」が、ラスボス前にリベンジを果たし、見事クリアしていたのだった。”

こちらは、クリアした順番が違うだけであって、ゲームの状態は同じ、二人がした体験もほぼ同じと言えるでしょう。
マリオのようなアクションゲームはプレイヤーによって得手不得手はあるし、ステージ3をクリアできない人がステージ4を絶対にクリアできないなんてことはなく
何度も挑戦しないとクリアできない人がいるくらいの難易度の領域であれば、ステージクリアの順番を強制する意味がありません。
つまり仕様Bはステージを攻略する順番が選べるようになっただけで、難易度は何ら変わらず、
プレイヤーの感じるわずらわしさを軽減し、作り手もゲームの魅力を伝える機会が増え
双方が得をする親切仕様になったと言えるでしょう。

別の視点からもう一つ。
「ゆとり仕様」って言葉、何らかのゲームの続編が出たときに使われることが多いと思います。
「今作になってプレイヤーを手助けするような新しい仕様が追加された。でも、やりすぎだ。」
こんなニュアンスかと思います。
これを先ほどの例で喩えるとこうなります。

”見事マリオ1とマリオ2をクリアした伊藤君。しかし、マリオ2をクリアした時の伊藤君は「クリアしてないステージがある」とゲームに記憶されており、ステージクリアの体験が一つ欠けている。”

マリオ2になって、ゆとり仕様が追加されたという例です。
こちらは、ゲームを親切にしたつもりが、仕様の変化によってこのような差異を生み出してしまうもの、とでも言いましょうか。

一般論的に言い直すとこうです。
・プレイヤーや、プレイ機会ごとに結果が変わる工程を短縮/簡単化できる仕様・・・ゆとり仕様
・プレイヤーや、プレイ機会ごとに結果が変わらない工程を短縮/簡単化できる仕様・・・親切仕様

わかりにくいですね・・・。
図にするとこうです。
わかりにくいですね・・・。

それでは次に、実際に昔のポケモンと今作のポケモンで大きく変わった部分をピックアップして、
上記の線引きをもとに、それが「ゆとり仕様」なのか「親切仕様」なのかを考えて、このわかりにくさを補おうと思います。

〇ポケモン ソード/シールドはゆとりゲームなのか?昔のポケモンと細かい仕様を比較

ポケモン ソード/シールドはゆとりゲームなのでしょうか。
本当にそうなのか昔のポケモンと比較してどんな特徴があったか、その一部を挙げてみましょう。

1.オカンが言うには、シンボルエンカウントになったらしい。
→ほなゆとりゲームやないか!
 ・・・というと聞こえが悪いですが、これはいい変化だと思います。
なぜゆとりに分類されるかというと、単純に
シンボルエンカウントということは野生のポケモンに出会わずにクリアすることが可能になった=全滅する危険が減った
ということだからです。
ポケモンは「にげる」コマンドの成功率が100%でない(敵とのレベル差が大きい場合を除いて)ため、
ランダムエンカウントの時はエンカウントが避けられないので、草むらやダンジョンを通り抜けるときにダメージを受ける可能性が常にありました。
先ほどの一般論に当てはめると、「ダメージを受ける工程をカットできるようになった」と言えます。
ただ、必ずしもシンボルエンカウント=ゆとり仕様ではなく、例えばロマサガ1のようにすさまじい数の敵が出てくるような場合は逆に難易度は高くなります。
あくまで、今作のポケモン程度の敵数であれば、ゆとり仕様と言えると思います。



ではなぜこれが良い変化なのかというと二つ理由がありまして、ポケモンというゲームは野生のポケモンと出会うのがうれしいゲームデザインになっていて、
プレイヤーの乗り越えるべき障害としての役割は大きくないので、野生と遭遇する/しないをプレイヤーが選択できてもいいだろうというのがまず一つ。
プレイヤーの乗り越えるべき障害というのは、道中に配置されている敵トレーナーが担っていて、こちらは不可避であることも多いです。
もう一つは、今作は序盤から高レベルの野生と出会える設計になっているため、いきなりそんなのと出会って全滅してしまっても
それはプレイヤーの自己責任ということになり、ゲームとしての理不尽さが軽減されるからです。

2.オカンが言うには、出会ったことがあるポケモンに対して有効な技が技選択画面に表示されるらしい。
→ゆとりゲームちゃうやないか!
 今作のポケモンは、戦闘での技選択時に技それぞれが相手に有効かどうかが表示されるようになっています。



いかにもゆとり仕様っぽい内容ですが、これは親切に分類されると思います。
そもそもタイプ相性表というのはポケモンの公式ホームページにも載っており、隠しているようなシステムではなく、プレイヤー全てがそれを平等に知っているべきであり
「ゲームを有利に進めるために18×18の表を暗記しろ」という方がバカげています。
今作のポケモンは出会ったことがあるポケモンであれば図鑑からタイプがわかるので、それと相性表を照らし合わせれば何が有効か/そうでないかがわかるので
この仕様は「プレイヤーがタイプ相性表を調べる時間をカット=ゲームの状態に変化のない工程をカットできるようになった」親切仕様と言えます。

3.オカンが言うには、戦闘に参加してなくても手持ち全てのポケモンが経験値獲得できるらしい。
→ほなゆとりゲームやないか!
 細かい計算方法等はわかりませんが、もう少し正確に言うと
・レベルが上がっていくと、獲得経験値が減る。
・戦闘に参加していないポケモンも、戦闘に参加したポケモンの2分の1くらいの経験値を得られる。
ような感じになっています。



昔のポケモンでは、複数のポケモンに経験値を分け与えようと思ったら次のようなやり方で敵を倒す必要がありました。
1.経験値を与えたいポケモンを一度戦闘に出してひっこめる。
2.経験値を与えたいポケモンに「学習装置」を持たせる。(ポケモン金/銀)
しかももらえる経験値は匹数分で割られます。
これの分類は簡単です。
1の方法は必ず1回は敵の行動をはさむので、今作の仕様では「ダメージを受ける工程をカットできるようになった」と言えます。
また、そもそもの仕様として同じ経験値を得るために必要な、倒すべき敵の数が減っていますので
「ダメージを受ける工程をカットできるようになった」「技ポイントを消費する工程をカットできるようになった」ため、
ゆとり仕様であると言えます。
これは個人的な話ですが、ポケモンのストーリーを進めるうえで経験値を
「1~2匹の少数精鋭に絞って与えるか」「タイプのはばを考えて多少レベルが低くなっても多くの手持ちに与えるか」みたいな駆け引きが好きだったので
この仕様は残念です。

4.オカンが言うには、技マシンが何回でも使えるらしい。
→ゆとりゲームちゃうやないか!
 たしかブラック/ホワイトからこの仕様だったと思います。
昔のポケモンでは技マシンを複数回使いたいと思ったら、ソフトとゲームボーイをもう一台用意して
ポケモンを交換して技を覚えさせて戻して、とか、技マシンを持たせて交換して、とかしていました。
(本当はアイテム増殖バグがあったので、それを知っていた人はもっと手軽にやってたと思いますが・・・。)
基本的に、技マシンもう一度使いたいなんて人は対戦を見据えてプレイしている人だと思います。
今はネットつないで手軽に対戦ができる時代ですので、もし今作も技マシンが消費アイテムだったら、もう一匹10万ボルト覚えさせたいからソフトもう一本買って・・・
とかやらせるのは余りにも対戦を楽しみたいプレイヤーに不親切です。
ここでカットされるのは「ソフトを購入するのに必要な費用」と「技マシンを手に入れるまでゲームを進める手間」ということになりこれは親切仕様であると言えます。

今作は技マシンとは別に「技レコード」というのがあり、技マシンよりも比較的強い技が覚えられるようですが、こちらは消費アイテムとなっています。
あまり強い技をポンポン覚えてほしくないという制作の意図があるんだとは思いますが
入手条件を少しきつくして、こちらも何回でも使用できるようにしてもよかったんじゃないかな~と個人的に思いますね。

5.オカンが言うには、いつでもボックスからポケモンを預けたり引き出したりできるようになったらしい。
→ほなゆとりゲームやないか!
 草むらにいようが、ダンジョンのど真ん中にいようが、手持ちのポケモンをパソコンのボックスにいるポケモンと入れ替えることができます。



仮に、パソコンにそこそこ強いポケモンが6匹いれば、実質12匹のパーティでダンジョンに挑んでいることになります。
これは簡単に分かると思います。
・ダンジョンを出てポケモンセンターへ行き、ポケモンを入れ替える工程を省ける=ダメージを受ける工程をカットできる。
・いつでも手持ちを健康なポケモンと入れ替えることができる。=アイテム消費をカットできる。
ゆとり仕様です。


 ポケモン ソード/シールドでの実例はこの辺にしておきます。
〇ポケモン ソード/シールドはゆとりゲームなのか?とかいう見出しを書いといてあれですが、別に結論は出しません。
(この記事もようやく終わりに近づいて適当になってきた。)
「ゆとり仕様」と「親切仕様」の線引きのしかたが大体わかってもらえたでしょうか・・・。

〇親切仕様のデメリット

最後に、親切仕様のデメリットを説明しようと思います。
それは何でもかんでも親切にすると「演出が味気なくなる」、ということです。
またポケモンを例に挙げます。
ポケモン対戦ガチ勢は、より強いポケモンで勝負するために「厳選」という行為を行います。
具体的に何をするのかというと
1.育て屋さんに♂と♀のポケモンを預ける。
2.しばらく歩くと、預けた♀のポケモンの卵が産まれる。
3.さらにもっと歩くと、卵が孵化する。
この工程を、強い個体が生まれるまで何度も繰り返すんです。
ここまで記事を読んでいればわかると思いますが、3は省いてもいい工程です。
「卵が孵化するまで待ちますか?」とかいう選択肢を出して、ワンタッチで付加できる仕様を追加してもそれは親切仕様であると言えると思います。
ところがどうですか!
ポケモンの卵が孵化するイベントがそんなにあっけなくていいでしょうか?
私は初めて卵をもらった時、何が生まれるんだろうとワクワクしながら冒険したもんです。
このように親切にした分、失うものがあることがあるんです。

〇まとめ

・ゆとり仕様とは、プレイヤーや、プレイ機会ごとに結果が変わる工程を短縮/簡単化できる仕様である。
・親切仕様とは、プレイヤーや、プレイ機会ごとに結果が変わらない工程を短縮/簡単化できる仕様である。

何かの手間を省く仕様を考えた時、その手間を省いたことで「ゲームの状態」と「プレイヤーの体験」がどう変化するかを考えることが重要です。
経験値低いのであまりえらそうなこと言えませんが、ゲーム作ってると
「親切にする」とか「ゆとり仕様」とか「自分のやりたいこと」とか「演出」とか
ぐるぐる混ざってどうすればいいかわからなくなることがありますが、その時の判断の一助になればと思います。
(最後の方力尽きて適当になっちゃってすみません・・・。)


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